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てきた。最近になりましてから、実はエジプトでの気象変動であろうと、あるいはチグリス、ユーフラテスの古代文明の発祥でありましょうとも、地球の中で同時多発的に文明が起こっているという事が明らかになってきている。これは多分1万2000年ぐらい前に寒冷期が終わりまして、だんだん温暖化をしてくる。その中で途中でまた一度寒冷化の時期を迎えるのですが、ちょうどそれが5000年ぐらい前なのであります。そのあたりの世界的な気象変動、地球規模での気象変動によって人々が稼働し、そして異文化がぶつかりあう中で文明が勃興してきたということを物語っていると思われます。
これは三内丸山古墳の場合でも約4000年ぐらいのところで次第にこの文明が消えていくのでありますが、同じように、古い長江の文明にいたしましても、3500年から4000年前ぐらいの間にいずれも姿を消している。それは気象変動のためそこには住めなくなってくるというような現象が多分あったのだろうと思われますし、そういうことに対する人々の興味というのは、今、世界中で古代史ブームというものを巻き起こしているのは皆さん、ご存じのとおりです。
こういう問題は確かに専門家でないと駄目なようでありますが、地域の中でそういう事柄について話せる人というのはいくらでもいるのです。そういう人たちが、説明に付いてくれるかどうかによって、その観光の味わいは全然変わってまいります。
また個人的な話をして申し訳ないのでありますが、イスラエルにまいりまして、今のガザ地区でありますとか、あるいはもっと北部のレバノンに近いほうでありますが、そういうところも行った事がございます。これは亡くなった山本七平さんと一緒に行ったので、彼の知り合いの地元に留学している人たちが案内をしてくれたので非常によくわかったし、どこが危険であるかもよくわかったのです。通常の旅行業者の人ではこうはいかないのであります。さらに、その中で聖書の物語と歴史とがどうしても日本人にとっては一致しないわけであります。それがそういう専門家と一緒だとだんだん一致してくるのです。それでまた帰ってからもう一度旧約聖書をひもとき、歴史をひもといてみて、やっと納得して、そしてあの土地に対する興味というものがまた深まっていく。こういう観光というものもあり得ると思います。
さらにトルコにまいりました時も、あそこにボスポラス大学というのがございますが、そこで教えていた中国の人と巡り合いまして、この人に付いてもらってかなり奥の方まで入っていきました。有名なトルコ風呂というのがございますが、レスラーのような格好をしたおじさんに、1時間ぐらい蒸された上で垢を擦り落とされるのです。ゴシゴシと落とされると、恥ずかしいぐらいに垢が取れる。その間、擦りながら何か一生懸命言っているのを聞くと、「チップ、チップ」と言っているのです。「ジャパニーズチップ」と、こう言っているのです。日本人だったらそのチップをはずめというのです。それでいい返事をしないと、痛いという事をやるのです。そういうところも中国の人と一緒に行っていましたら、「こいつは中国人だ」と言ったら、「ああ、そうか」と、がっかりしてあまり力を入れなくなる。これはいいのか、悪いのかは知りませんが、こういう事は現実に起こるのであります。
そういう意味で、地元のガイドというのが非常に大事なんですね。ガイドは表面的なものではなくて、本当にその場所をよく知っており、そして愛しており、そして文化の違いというものを語れる。先ほど言った食べ物でも通訳をしてくれる。どういう具合につくるのかということも教えてくれる。そういう人たちが増えてこなければならない。これは普通の市民でも実は少し訓練をすれば出来ることであります。さらに言えば、これはホームステイという事で交流をしてみればすぐにわかります。
日本人が外国、アメリカでもそうですが、特にヨーロッパに行ってホームステイをすると嫌がられることが1つあるのです。何かご存じでしょうか。それは水道の水をジャージャー出した中でお皿を洗うことです。どうしても癖が出るのです。あれは「おはらい」という日本の神事でありまして、流れる水に手をかざすという事によって清められるのです。
これは1つの文化といいましょうか、癖であります。地鎮祭という神様の行事がありますが、あれは実際には、日本人はあまり神事とは考えていないのでありますが、ともかく式場に入る時に小さなしゃもじで水をチョロチョロとかけて、それを手にかけるということで全身がきれいになるという作法があります。あれで手が洗えるはずはないし、O−157が取れるはずもないのでありますが、あれできれいになるわけです。「洗う」というやまとことばは、「新ふ(アラウ)」、つまり新しくするという意味なのです。ですから皿は全部流水で流すということがどうしても必要なわけです。そうすると、ヨーロッパの人たちは日本人は何と水を贅沢に使うのか、勿体ないと言います。とこ

 

 

 

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